入管の永住審査厳格化で何が変わるのか

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入管の永住審査厳格化で何が変わるのか

入管の永住審査は今後、大きな転換点を迎える可能性があります。政府は、永住許可基準のうち「独立生計要件」と「国益要件」を見直し、日本語や日本の制度・ルールを学ぶプログラムの受講を条件とすることも含めて検討する方針を示しています。現行の永住許可ガイドラインでは、素行が善良であること、公共の負担とならず将来にわたり安定した生活が見込まれること、納税・年金・健康保険料などの公的義務を適正に履行していることが主な判断材料です。今後は単に「未納がない」「一定の収入がある」というだけでは足りず、将来にわたり日本社会の一員として自立して生活できるかを、より具体的かつ厳格に確認する方向へ進むと考えられます。(法務省)

特に大きな影響が予想されるのが、年収水準の大幅引き上げです。これまで永住審査には全国一律の明確な最低年収額は公表されておらず、実務上は家族構成、扶養人数、居住地域、職業の安定性、預貯金などを含めて総合判断されてきました。ところが報道では、日本人世帯の平均所得を参考にし、世帯人数に応じた年収水準を設定する案が伝えられています。

仮にこの方向で制度化されれば、単身者、子どものいる世帯、海外の親族を扶養している人など、それぞれの事情によって必要とされる収入額が大きく異なることになります。これまで「年収300万円前後」が一つの目安として語られてきた実務は、根本から変わる可能性があります。ただし、どの統計を基準にするのか、世帯人数ごとの金額はいくらになるのかなど、具体的な基準はまだ正式に公表されていません。(行政書士法人Tree)

さらに注目すべき点は、過去の年金保険料の納付状況だけでなく、将来の年金受給見込額まで審査対象とする考え方です。報道されている案では、厚生年金に長期間加入した場合に相当する受給水準を一つの目安とし、不足する場合には預貯金や金融資産によって補完できるかを確認するとされています。

これは、現在の収入だけではなく、退職後も生活保護などの公的扶助に依存せず暮らせるかを審査するものです。一方、日本に来た年齢が高い人、自営業者として国民年金に加入してきた人、育児や介護で就労期間が短い人にとっては、本人の努力だけでは解決できない不利が生じるおそれがあります。年金制度の違いを考慮せず、受給見込額だけで一律に判断することには慎重な検討が必要です。(一般社団法人 東京都外国人就労認定機構)

日本語能力についても、従来とは異なる位置づけになる可能性があります。現在の永住許可では、日本語能力試験の合格が一律の法律要件になっているわけではありません。しかし今後は、行政からの通知を理解し、税金、年金、医療、教育、防災などの制度を利用し、近隣住民や勤務先と意思疎通できる程度の日本語能力が求められる方向です。

単に試験に合格しているかだけでなく、生活上必要な情報を理解し、自ら手続きを行えるかが重視されることも考えられます。日本語能力を求めること自体には一定の合理性がありますが、高齢者、障害のある人、教育を受ける機会が限られていた人などについては、適切な例外や配慮が必要です。

また、地域社会での定着度も重要な判断要素になり得ます。長期間日本に住んでいるという形式的な在留年数だけでなく、安定した職業、家族の生活基盤、子どもの就学、日本の法令や生活ルールの理解などを通じて、日本社会との実質的な結び付きが確認される可能性があります。

もっとも、自治会への加入や地域行事への参加を事実上の要件にすれば、居住地域や勤務形態による格差が生じます。仕事が多忙な人や、地域活動がほとんど行われていない地域に住む人が不利になることも考えられます。何をもって「定着」と評価するのか、客観的で予測可能な基準が不可欠です。

永住許可は、在留期間や就労活動の制限がなくなる非常に強い在留資格です。そのため、取得時の審査を厳しくし、将来の生活安定性や社会との関係を確認するという政策目的には一定の合理性があります。しかし、基準が高すぎれば、日本で長年働き、納税し、家族を育ててきた外国人まで排除する結果になりかねません。収入、年金、日本語、地域との関係は、いずれも一つの数値だけで評価できるものではありません。

なお、2026年8月3日現在、出入国在留管理庁が公表している永住許可ガイドラインは2026年2月24日改訂版であり、年収額、年金受給見込額、日本語能力、地域社会での定着度に関する新しい具体的基準は、まだ正式に公表されていません。報道されている内容は、今後変更される可能性があります。(法務省)

永住申請を予定している人は、年収だけを見るのではなく、納税証明、年金記録、健康保険料の納付状況、雇用の継続性、預貯金、日本語学習歴、家族の生活状況などを総合的に整えておく必要があります。今後の永住審査は、「日本に何年住んだか」から、「日本で将来にわたり安定して生活し、社会の一員として定着できるか」を問う審査へ変化していくと考えられます。